
暗号資産取引所クラーケンが先物取引NinjaTrader買収を完了、Q1収益は前年比19%増

暗号資産取引所クラーケンは、先物取引プラットフォームNinjaTraderの買収を完了したと発表した。2025年第1四半期の収益は前年比で19%増の約47.17億ドルとなり、米国顧客に伝統的なデリバティブ取引を提供できる体制が整った。
米国ユーザーに伝統的な先物取引を提供へ
クラーケンは5月1日のレポートにて、NinjaTraderの買収完了を正式発表した。これにより、米国のユーザーは従来型の先物市場にアクセス可能となり、株式やETFを含む幅広い取引サービスを享受できる。NinjaTraderは、米商品先物取引委員会(CFTC)に登録されたFutures Commission Merchantであり、先月には米国の一部顧客向けに1万1,000超の株式およびETFの取引を提供開始していた。
クラーケンは今回の買収を「暗号資産と伝統金融の間で最大規模の取引」と位置づけ、NinjaTraderの英国、欧州、オーストラリアへの事業拡大も視野に入れている。クラーケン自体も、2026年初頭のIPO(新規株式公開)を目指し、約200億〜1兆5,000億円(2億〜10億ドル)の債務パッケージによる資金調達を検討中である。
トランプ再登場の影響で取引量と資産額が減少
クラーケンの2025年Q1収益は前年比で19%増加し約7,075億円となったが、前四半期(2024年Q4)比では6.8%の減少であった。取引量は前期比9.6%減の約31兆3,050億円(2,087億ドル)、保管資産額も18%減の約5兆2,350億円(349億ドル)と減少傾向にある。
仮想通貨市場に広がるトランプ政権リスク
クラーケンは、これらの減少の背景として「市場全体の取引活動の鈍化」を挙げており、米大統領ドナルド・トランプ氏による「大規模関税導入」発言が、仮想通貨市場全体の時価総額を18%下落させたと分析している。前四半期にはトランプ氏の選挙勝利による乱高下が発生し、クラーケン含む複数プラットフォームで記録的な取引高が見られたが、Q1には反動が現れた格好である。
一方で、クラーケンの調整後EBITDA(利払い・税・減価償却前利益)は前四半期比1%増の約2,811億円(1.874億ドル)を記録し、安定感を見せた。また、資金が入金されたアカウント数は前期比10%増の390万件に達し、ユーザーの取引関与度が高まっていることを示唆している。
さらにReutersは4月18日、2023年10月に共同CEOに就任したArjun Sethi氏のもと、クラーケンが組織再編を行い、これまでに約400名をレイオフしたと報じている。
GENAIの見解

クラーケンがNinjaTraderを買収し、米国の顧客に伝統的な先物取引を提供できるようになったことは、仮想通貨取引所の役割が単なる「暗号資産の取引所」から、「総合的な金融プラットフォーム」へと進化していることを示しています。
特に注目すべきは、NinjaTraderが提供する株式やETF取引が仮想通貨取引と同一プラットフォーム上で可能になるという点です。これにより、従来の投資家層が仮想通貨市場にアクセスしやすくなるだけでなく、資産クラスをまたいだ柔軟なポートフォリオ構築が実現しやすくなります。
一方で、トランプ氏の発言による市場の急激な変動や、取引量・資産額の減少は、仮想通貨市場が依然としてマクロ経済や政治的リスクに大きく左右される不安定な環境にあることも示しています。このような状況下でクラーケンが収益を確保し、IPOに向けた準備を進めている点は、経営的にも非常に評価できます。
今後は、規制の動向や市場の成熟度次第で、このような暗号資産×伝統金融の融合がさらに加速する可能性が高いと見ています。クラーケンのような企業がどこまで多様なサービスを一元的に提供できるかが、今後の業界の競争力を左右する鍵になると思います。