
Apple、NFTと暗号資産アプリの規制を緩和|米国におけるApp Store方針を変更

Appleは米国App Storeのガイドラインを改定し、NFTや外部決済への誘導を含むアプリの制限を大幅に緩和した。これはEpic Gamesとの反トラスト訴訟における連邦地裁の判決を受けたもので、暗号資産業界にとっても重要な転換点となる。
米国裁判所の判断で外部リンク・購入誘導が可能に
今回の規制緩和は、Appleが2021年に受けた差し止め命令に「故意に違反していた」と連邦判事が判断したことを受けての措置である。判決によりAppleは、アプリ外で行われた購入(従来は最大27%の手数料対象)に対して手数料を徴収することが禁じられ、開発者による外部サイトへの誘導も認められることとなった。
AppleがiOS開発者に送付したメールによると、「米国のApp Storeにおいて、他者が所有するNFTコレクションを閲覧する際に、ボタンや外部リンクなどを含めることが禁止されなくなった」と明記されている。また、「アプリ内課金以外の購入方法をユーザーに促すことも、米国ストアでは禁止されない」とされており、これまで厳格だった外部誘導に関する方針が一転した。
NFTアプリやウォレット開発が加速する可能性
Farcasterのソフトウェアエンジニア、Wojciech Kulikowski氏は「これは暗号資産ネイティブなモバイルアプリにとって、かつてない実験の機会をもたらす」と語っている。Appleの旧来の方針では、OpenSeaのようなNFTマーケットプレイスはiOS上でNFTの閲覧のみが可能で、購入機能が制限されていた。
一部企業、たとえばMagic Edenは、アプリ内ブラウザを利用して外部ウォレット決済を可能にする手法を導入しており、これはMetaMaskやCoinbase、Uniswapなどのセルフカストディ型ウォレットにも通じる仕組みである。
ただし、Appleのガイドラインには依然として暗号資産に対する制約が存在する。たとえば、アプリ内で暗号資産を報酬として提供する行為、ICO(新規コイン提供)の実施、端末を利用したマイニングなどは禁止されている。
Googleとの方針差にも注目
Googleは2023年にNFTに関するPlayストアポリシーを改定し、購入場所に関係なくNFTによるアプリ内コンテンツの解放を認めている。また、ブロックチェーン技術を利用しているゲームについては、ユーザーへの明示が義務づけられている。
今回のAppleの方針変更は、NFTや暗号資産関連アプリのエコシステム拡大にとって大きな一歩であり、今後のモバイルアプリ市場における競争の構図にも影響を与える可能性がある。
GENAIの見解

Appleが米国App Storeにおける規制を緩和し、外部リンクや外部購入誘導を容認したことで、これまでモバイルアプリ開発者が直面していた大きな障壁が一つ取り払われました。
特にNFTマーケットプレイスやDeFi系アプリにとっては、これまで「閲覧のみ」「購入不可」といった中途半端なUXしか提供できなかったのが、今後はユーザーを自社サイトやブラウザベースの決済手段にスムーズに誘導できるようになります。これは、モバイル環境におけるWeb3の採用を一段と後押しする要因となるでしょう。
また、Appleの変更が米国限定であるとはいえ、判決を根拠とした変更であることから、将来的に他地域へも影響が波及する可能性があると見ています。今後の注目点は、Appleがどこまで暗号資産ネイティブな機能(たとえばウォレット連携やオンチェーン取引)を許容していくのかという部分に移っていくでしょう。
一方で、マイニングやICOの禁止、タスク報酬型のトークン配布の禁止といった制限は引き続き残っているため、「全面解禁」とまではいきません。しかし、これまでのAppleの姿勢を考えれば、今回の動きは極めて大きな進展だと評価できます。業界全体としても、これを追い風にモバイル対応のWeb3アプリの開発が加速していくと予想されます。