
仮想通貨におけるSTOとICOの違いとは?特徴や仕組みを具体例とともに紹介!

プロトレーダー Trader Zのイチ押しポイント!
- ICOとSTOは企業やプロジェクトがブロックチェーン上で独自のデジタル通貨を発行し資金調達を行う手法
- ICO:ユーティリティトークン(サービス利用権利や支払い用のデジタル通貨)を発行し資金調達を行う
- STO:セキュリティトークン(裏付け資産や法的権利を持たないデジタル資産)を発行して資金調達を行う
- ICOの代表例としてはイーサリアム、STOの具体例としてはINX Limitedなどが挙げられる
- イーサリアム:ICOで仮想通貨ETHを発行、分散型インフラとしての「世界共通アプリケーション基盤」
- INX Limited:セキュリティトークンINXを発行し、カナダNEO証券取引所に上場
- ICOは規制が緩く手軽だが信頼性に課題があり、STOは証券規制下で行われるため透明性と保護が高い
- ICOは世界中誰でも参加可能で、STOは投資家の資格要件が厳格(例えば米国の「認定投資家」基準等)
- ICOトークンは仮想通貨取引所で売買され、STOトークンは証券専用の取引市場で扱われる
- 2024年度の国内STO発行額は約4,640億円に達し、累計発行額は1兆6,820億円を突破
- 2025年、ICOは派生的な資金調達法へと形を変え残存、STOは各国で本格実用化に向けた動きが活発化
- SBIホールディングスは自社傘下にデジタル証券子会社を設立し、ブロックチェーン社債や不動産STを発行

今後、中身のないICOは淘汰され、「信用あるSTO」と「実用性のあるユーティリティトークン」が中心になっていく可能性が高いと思っています。



ICOとSTOにつきましては、それぞれに利点と課題があるものの、突き詰めると「信用」に集約されるものと捉えております。
ICOはその9割以上が詐欺的案件と言われており、一方のSTOはあまりに堅実すぎて市場の注目を集められていない現状があります。
しかし、これは裏を返せば、ICOは適切に運用すれば資金調達の革命たり得たものであり、STOは今後の本命としての可能性を秘めているとも言えるでしょう。


Trader Z
ディーリングアドバイザー
世界第3位の仮想通貨取引所であるMEXCのトレーダーランキングにおいて、常に上位にランキングされる世界有数のトレーダー。
2024年10月には1,229,864,919.71USDT(日本円に換算して 1920 億円)の取引を行い、第1位となる。2024年12月にGFA Capital社が行う暗号資産ディーリング業務のアドバイザーに就任。


監修 Trader Z
ディーリングアドバイザー
世界第3位の仮想通貨取引所であるMEXCのトレーダーランキングにおいて、常に上位にランキングされる世界有数のトレーダー。
2024年10月には1,229,864,919.71USDT(日本円に換算して 1920 億円)の取引を行い、第1位となる。2024年12月にGFA Capital社が行う暗号資産ディーリング業務のアドバイザーに就任。
ICOとSTOの主な違い
規制と法的枠組みの違い
ICOとSTOの最大の違いは、法的な取り扱いです。
ICOは発行時に特別な許認可を必要とせず、基本的に自由にトークンを販売できます。その結果、スピーディかつ手軽に資金調達ができる一方で、発行体が責任を問われにくい構造になっています。
対してSTOは、証券として取り扱われるため、発行前に証券法などの規制に基づく審査や手続きが求められます。トークンが有価証券と見なされる以上、投資家の保護や透明性の確保が重視され、当局の監督下で運営されることになります。
この違いにより、ICOは自由度が高い分リスクも大きく、STOは信頼性が高い分、参入や実施に手間と時間がかかるという傾向があります。
投資家保護の観点からの違い
ICOでは、購入者は基本的に将来的なサービス利用を前提としたトークンを取得しますが、そのトークンに法的な権利が付与されているわけではありません。トークンの価値は発行体の成否に強く依存しており、もしプロジェクトが失敗すればその価値はゼロになる可能性もあります。
一方でSTOでは、トークンに明確な経済的権利が付与されることが多く、たとえば配当や利益分配、議決権といった仕組みが用意されます。さらに、STOには法的な開示義務があるため、投資家は判断材料としてより正確な情報にアクセスでき、安心して出資しやすくなっています。
このように、投資家保護という観点では、STOのほうが制度的に整備されていると言えるでしょう。
トークンの性質と価値の違い
ICOで発行されるトークンは「ユーティリティトークン」と呼ばれ、あくまでプロジェクト内で使用される“利用券”のような立ち位置です。そのため、トークン自体が直接的な収益を生むわけではなく、市場での人気や期待感によって価格が変動します。
それに対してSTOのトークンは「セキュリティトークン」とされ、特定の資産や権利を裏付けとしています。不動産や債券、事業収益などを基にしたトークンであれば、それらの実態に基づく評価がされやすく、より現実に即した投資対象として位置づけられます。
トークンの持つ意味そのものが両者ではまったく異なるため、目的に応じた選択が重要になります。
資金調達プロセスの違い
ICOはスマートコントラクトによって自動化されたプロセスが多く、早ければ数日で完了するケースもあります。事前準備としてホワイトペーパーを用意すれば、多くの国で即座に実施が可能でした。
一方のSTOは、まず法的要件をクリアし、場合によっては金融庁や証券監督機関の承認を受ける必要があります。これにより調達の準備期間は長くなりがちですが、その分信頼性は高まります。
また、ICOでは広く一般に向けてトークンが販売されるのに対し、STOでは一定の条件を満たした認定投資家のみに限定されることもあり、参加者層にも違いが見られます。
ICOとは
ICOの基本概念
ICOとは「イニシャル・コイン・オファリング」の略で、仮想通貨やブロックチェーンを活用した資金調達の方法です。企業やプロジェクトが独自のトークンを発行し、それを一般の投資家に販売することで資金を集めます。
これにより、スタートアップでも銀行やベンチャーキャピタルを介さずにグローバルな規模で資金を調達できるようになりました。
ビットコインやイーサリアムなどの主要な仮想通貨でトークンを購入する形式が一般的で、購入者はそのプロジェクトの将来性に期待して資金を投じることになります。
発行されるトークンは、プロジェクト内で使える権利やサービスに紐づいた「ユーティリティトークン」であることが多く、株式のように配当や議決権を持つわけではありません。
ICOの仕組みと特徴
ICOは、発行体がホワイトペーパーと呼ばれる文書を通じてプロジェクトの目的や技術的な構想、トークンの配布方法などを明示するところから始まります。
その後、購入希望者が仮想通貨で資金を送ると、発行体は対応する量のトークンを提供します。取引所に上場されれば、そのトークンを売買することも可能になります。
最大の特徴は、グローバルに公開されることで誰でも簡単に参加できる点です。これにより、2017年〜2018年には急速に多くのプロジェクトが資金調達を行い、一部では数十億円規模の資金が短期間で集まりました。
ICOのメリットとデメリット
ICOのメリットは、スピーディーかつコストを抑えて資金を集められる点にあります。
従来の株式市場を経由した調達では時間や費用、規制のハードルが高くなりがちですが、ICOはスマートコントラクトを活用することで手続きがシンプルになり、多くのプロジェクトがチャレンジできる環境を作りました。
しかし、法的な整備が追いついていなかったことから、詐欺やプロジェクトの頓挫といったリスクも多く指摘されています。ホワイトペーパーの内容が曖昧だったり、実体のないプロジェクトが資金を集めて消えるといった事例もありました。
そのため、各国の金融当局はICOに対する規制を強化する動きを見せ、現在では一部の国で実質的に禁止されている状況もあります。
ICOは、ブロックチェーンの可能性を一気に広げた象徴的な手法である一方、その自由度の高さが裏目に出ることもあったのです。
STOとは
STOの基本概念
STOとは「セキュリティ・トークン・オファリング」の略で、有価証券に該当するトークンをブロックチェーン上で発行し、資金調達を行う仕組みです。
ICOと同様にトークンを発行する点では共通していますが、その性質や法的な扱いは大きく異なります。
STOで発行されるトークンは、株式や社債、不動産などの資産を裏付けにしており、トークンの保有者には配当や利益分配、議決権といった法的な権利が与えられる場合があります。
そのため、トークンは「デジタル証券」とも呼ばれ、従来の金融商品に近い性格を持ちます。
STOの仕組みと特徴
STOを実施するには、各国の証券法や金融商品取引法に基づく審査や届出が必要です。発行体は財務状況や事業内容を開示し、適切な手続きを経たうえでトークンを提供することになります。
日本においても、2020年の法改正によりSTOの法的位置づけが明確になり、個人投資家向けにも一部解禁されました。
取引後のトークンは、証券専用の取引所や許認可を受けたプラットフォームを通じて売買されることが一般的です。
このような仕組みにより、透明性が高く、投資家保護の観点からも信頼性のある資金調達手段として注目されています。
STOのメリットとデメリット
STOの最大のメリットは、法令に準拠した形でトークンを発行することで、投資家の保護がしっかりと担保されている点です。詐欺的なプロジェクトや杜撰な運営のリスクが抑えられ、安心して参加しやすい環境が整っています。
また、トークンが実際の資産や事業に裏打ちされているため、その価値がより現実的に評価される傾向にあります。これにより、仮想通貨市場の不確実性に依存しない投資機会を提供できるのも特長です。
一方で、STOは規制のもとで実施されるため、準備や手続きに時間がかかり、発行コストもICOに比べて高くなりがちです。さらに、購入できる投資家が限定されるケースもあり、自由度やスピード感ではICOに劣る部分もあります。
とはいえ、安全性と信頼性を優先する傾向が強まる今の市場において、STOは堅実な資金調達手段として評価が高まりつつあります。
なぜSTOが注目されるのか
ICOの課題とSTOの解決策
STOが注目を集める背景には、ICOが直面した多くの課題があります。
特に、ICOのブーム期に発生した詐欺案件や開発の頓挫、資金持ち逃げといった事例は、投資家にとって深刻な問題でした。法的な整備が不十分だったこともあり、投資した資金がどこに使われるのか不明なまま、プロジェクトが消えるというケースも少なくありませんでした。
こうしたICOの混乱を受けて、より信頼性の高い資金調達手段として生まれたのがSTOです。
金融商品として法的な位置づけが明確であり、規制当局の監督下で実施されるため、発行体には透明性の高い運営が求められます。
投資家も、プロジェクトの実体や資産の裏付けを確認したうえで判断できるため、納得感を持って参加しやすくなります。
ICOで顕在化した“自由すぎる設計”によるリスクを、STOが制度面から補っている点は、今の市場がSTOに期待を寄せている大きな理由のひとつです。
市場の信頼性向上への寄与
ブロックチェーン業界全体が成熟期を迎えるなかで、信頼性はこれまで以上に重要なキーワードになっています。技術だけでなく、実際に使われる仕組みとして社会に根づくためには、法制度や監督体制と連動した動きが求められています。
STOはその象徴的な存在です。
金融のルールをベースに設計されているため、従来の証券市場との親和性も高く、既存の金融機関や機関投資家が参入しやすい構造になっています。
事実、近年では大手証券会社や銀行がSTO市場への取り組みを強化しており、STOを通じてトークン経済が「グレーゾーン」から「公式な市場」へとシフトしつつあるのが現状です。
この流れは、仮想通貨の投資を考えるユーザーにとっても重要な転換点になるかもしれません。これまで以上に社会的な信頼を得られる環境で、ブロックチェーン技術を活用した資金調達や投資が行えるようになってきているのです。
投資家層の拡大と新たな機会
もう一つ、STOが注目される理由として、これまでアクセスが難しかった資産への投資が可能になる点が挙げられます。たとえば、不動産や未上場企業の株式、アート作品などは、通常であれば一部の富裕層や機関投資家しか投資できませんでした。
しかし、STOを使えばこれらの資産をトークン化し、小口での販売が可能になります。これにより、少額からでも現実の資産に紐づいた投資を行える仕組みが生まれ、個人投資家にも新たな選択肢が広がっています。
また、24時間いつでも取引できるブロックチェーンの特性を活かせば、従来の証券市場にはない柔軟性を持った投資環境が実現するかもしれません。こうした新たな機会の広がりが、STOの注目度をさらに高めている要因といえるでしょう。
最新のSTO関連ニュース(2025年4月時点)
最近のSTO事例と動向
2025年現在、日本国内ではSTO市場が着実に広がりを見せています。特に注目を集めているのが、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)のPTS市場「START」です。
これは、日本初のセキュリティトークン専用の取引プラットフォームであり、2023年末に始動して以来、個人投資家の参加も含めた本格的なセカンダリー市場が動き出しました。
不動産を裏付けとしたSTOが実際に上場されたことで、STOが理論上の話ではなく、日常の投資対象として現実のものになってきたことが感じられます。
また、野村ホールディングスの関連会社が発表したレポートでは、2024年度のSTO発行総額が約4,640億円にのぼったとされ、累計では1兆6,000億円を超える規模にまで成長しています。
このような具体的な数字からも、STOが一過性のブームではなく、金融市場の一部として確実に根付き始めていることが分かります。
各国の規制状況とその影響
海外に目を向けると、アメリカでは引き続き証券取引委員会(SEC)による厳格な監視が続いていますが、その一方で、STOに対応する証券取引の仕組みも徐々に整備されつつあります。
特に、機関投資家向けにはブロックチェーン上での証券取引や決済の実験が進行しており、リアルワールド資産(RWA)のトークン化がトレンドとして広がっています。
ヨーロッパでは、ドイツやスイスが積極的にSTOの法制度を整備しており、すでに国債や不動産に裏付けられたトークンが実際に発行・流通しています。アジアでは、シンガポールや香港が地域のSTOハブとしての地位を狙い、柔軟な規制と技術支援を組み合わせた枠組みを整えています。
これらの国々では、金融当局がSTOを単なる仮想通貨の延長としてではなく、次世代の金融商品として正式に位置づけ、発行や取引を管理している点が共通しています。結果として、世界的にもSTOは制度の中で活用される“信頼できる手段”として浸透し始めています。
今後の市場予測と専門家の見解
STO市場は、今後さらに成長する可能性があると見られています。特に、既存の金融商品をトークン化する「資産のデジタル証券化」が鍵を握るとする見方が強まっています。
実際、世界最大手の資産運用会社ブラックロックは、ブロックチェーン上で運用する国債ファンドを立ち上げ、既存の証券をトークン化して新たな投資手段とする取り組みを進めています。
こうした事例が増えるにつれ、STOは単なる仮想通貨プロジェクトの資金調達手段にとどまらず、従来の金融業界とブロックチェーン業界をつなぐ橋渡しとしての役割を強めていくかもしれません。
専門家の中には、将来的にIPOや社債発行の多くがブロックチェーンに移行する可能性もあると見ており、STOが新たな金融のスタンダードになることも十分視野に入ってきています。
まとめ
STOとICOは、どちらもブロックチェーンを活用した資金調達の手段ですが、その性質や目的は大きく異なります。ICOは自由度が高く、少ない準備でもグローバルに資金を集められる点が魅力でしたが、規制の未整備によるトラブルが相次ぎ、現在は縮小傾向にあります。
一方、STOは証券としての法的位置づけを持ち、当局の監督下で実施されるため、透明性と信頼性が高く、投資家保護の観点でも注目されています。特に、資産のトークン化や法整備の進展を背景に、国内外で活用事例が増加しており、今後は従来の金融市場を補完する手段としての役割が期待されています。
仮想通貨に一定の経験を持つ読者であれば、ICOとSTOの違いを理解することは、自身の投資スタンスを見直すきっかけになるかもしれません。情報の信頼性や規制対応を意識した判断が、これからのトークン投資においてますます重要になってくるでしょう。