
イーサリアムが2025年後半に「Fusaka」ハードフォーク実施へ、EVM大幅アップグレードを計画

イーサリアム財団は、2025年第3四半期または第4四半期に「Fusaka(フサカ)」ハードフォークを実施する計画を明らかにした。このアップグレードには、イーサリアム仮想マシン(EVM)に大きな変更をもたらす「EVMオブジェクトフォーマット(EOF)」の導入が予定されている。
EVMオブジェクトフォーマット(EOF)とは
EOFは、スマートコントラクトのバイトコードに新しい構造化フォーマットを導入するもので、従来の自由形式のバイトコードに代わり、ヘッダー・セクションテーブル・コード/データセクションといった明確な構成を持つモジュール型の形式を採用する。
これにより、コントラクトの検証がデプロイ時に一度だけ行われるようになり、EVMの効率向上と開発者体験の改善が期待されている。
新命令「RJUMP」でセキュリティ向上
EOFでは、従来の「JUMP」「JUMPI」命令に代わり、ジャンプ先をバイトコード内に明示的に固定する「RJUMP」「RJUMPI」命令を導入する。これにより、動的ジャンプによるバグやマルウェア混入リスクが大幅に低減される。
さらに、コード検証ルール(EIP-3670)とジャンプテーブル(EIP-3690)を組み合わせ、デプロイ時にすべてのジャンプ先が検証される仕組みが整えられる。
導入には賛否両論も
一方で、EOF導入に対しては反対意見も根強い。
イーサリアム開発者パスカル・カヴァーサッチョ氏は、「EOFは極めて複雑で、必要以上にEVMに負担をかける」と指摘しており、段階的かつより簡易的なアップデートによる対応を主張している。ツール類の大幅な更新が必要となることで、新たな脆弱性リスクが増加する懸念も示されている。
コミュニティ内での意見分裂も浮き彫りに
イーサリアムの投票プラットフォーム「ETHPulse」では、17,745ETHを保有する39人の投票者がEOF導入に反対している一方、賛成票はわずか7票、保有量も300ETH未満にとどまっている。
EVMの安定性を重視する声と、進化を求める声との間で、コミュニティ内の意見が割れている状況が浮き彫りになった。
GENAIの見解

イーサリアムがFusakaハードフォークを通じてEVM(イーサリアム仮想マシン)を大幅にアップグレードしようとしている動きは、長期的には非常に意義深いものですが、短期的には課題も多いと感じています。
まず、EVMオブジェクトフォーマット(EOF)の導入は、イーサリアムのスマートコントラクト基盤をより効率的かつ堅牢なものにするための前向きな取り組みです。現在の自由形式のバイトコードを整理し、検証プロセスを強化することによって、デプロイ後のセキュリティ向上やガスコスト削減、開発者の利便性向上といった明確なメリットが期待できます。特に、動的ジャンプ(JUMP、JUMPI)に起因するバグやセキュリティリスクを減らせる点は非常に大きな進歩だと思います。
一方で、反対意見が多く見られるのも理解できます。EOFは導入される変更の規模が非常に大きく、EVMの既存のツール群や開発環境に広範な影響を及ぼすため、開発者にとっての学習コストや新たなバグ発生リスクが無視できないレベルにあります。特に、既存のEVMと並行して新たなバージョンを長期的にメンテナンスする必要が出てくる点は、イーサリアム全体の運用コスト増加にもつながる恐れがあります。
また、現段階でコミュニティ内の合意が十分に取れていない点も懸念材料です。イーサリアムはこれまで一貫して、分散型ガバナンスとコンセンサス形成を重視してきたため、賛否が割れている状況での強行的な実装は、エコシステムの一体感を損なうリスクも孕んでいます。
総じて、FusakaハードフォークとEOF導入は、イーサリアムの技術的進化を促進する重要なステップになる可能性を秘めていますが、慎重な実装と十分な合意形成が不可欠だと考えています。特に、開発者コミュニティとの対話を重ねながら、段階的かつ安全な導入を目指すべきだと強く思います。