イーサリアム財団が取締役会と経営陣を分離、エコシステム再建へ本格始動

イーサリアム財団は、エコシステム強化を目指してリーダーシップ体制を大幅に再編成し、取締役会と経営陣の役割を明確に分離する新体制を発表した。これにより、戦略と運営の実行力を高め、エコシステム全体の発展を加速させる狙いがある。

取締役会はビジョン策定、経営陣は実行に専念

新体制では、取締役会が「財団の心と魂を守るセキュリティ評議会」としてビジョンを策定し、経営陣がそのビジョンの戦略的かつ実務的な実行に集中する役割分担が明確化された。3月2日付でシャオウェイ・ワン氏とトマシュ・K・スタンチャク氏が共同エグゼクティブディレクターに就任し、検閲耐性、オープンソースイノベーション、プライバシー、セキュリティ推進を柱とした活動を推進していく。

スタンチャク氏には2年間の任期設定

スタンチャク氏には2年間の任期が設定され、イーサリアムの最大の課題解決に取り組む。彼は、イーサリアムインフラ企業Nethermindの創業者としての役割と、今後発表予定のイーサリアム特化型ベンチャーキャピタルとの兼任となる予定だ。

財団は積極的な関与姿勢へ転換

これまで財団に対しては「DeFiイノベーションに無関心」との批判や、イーサリアム（ETH）の価格低迷との関連を指摘する声があった。今回の体制変更は、財団がエコシステムへの積極的関与を強化する姿勢を示すものと受け止められている。

今後の重点課題はスケーリングとUX向上

今後12カ月間の財団の重点課題は、レイヤー1のスケーリング、レイヤー2における「ブロブ」スケーリング、そしてユーザーエクスペリエンス（UX）の改善に置かれている。

これに向け、研究者ダンクラッド・ファイスト氏やプロトコルサポート担当ソフィア・ゴールド氏らが、ガスリミット引き上げを含むEIP-9678およびEIP-9698を提案している。

れまでイーサリアム財団には、特にDeFi領域などにおいて積極的なリーダーシップを欠いているとの批判が存在していました。加えて、ビットコインやソラナと比較してイーサリアム（ETH）の価格パフォーマンスが劣後していることも、財団の関与不足への不満を助長していた背景があります。そうした状況下で、取締役会と経営陣を明確に分離し、ビジョン策定とその実行をそれぞれ専任化する判断は、極めて合理的かつ時宜を得たものだと評価しています。

特に注目すべきは、スケーリング問題に明確な優先順位を置いた点です。レイヤー1とレイヤー2の両方における拡張性向上、そしてユーザーエクスペリエンス（UX）の改善という方向性は、現在のイーサリアムが抱えるボトルネックを的確に捉えており、市場からの期待にも合致しています。スタンチャク氏のような実績ある技術者が経営に加わることで、こうした課題に対する実行力が高まることが期待されます。

一方で、財団内部の体制変更が即座に市場の信頼回復やETH価格上昇に直結するわけではないため、中長期的な視点での取り組みの成果を見極めていく必要があります。財団のビジョンと現場レベルでの実行がどれだけ効果的にリンクするかが、今後の成否を分けるでしょう。

総じて、今回の体制刷新は、イーサリアムが「次の成長フェーズ」に進むための重要な土台作りだと捉えています。特にスケーリングとユーザー体験の両立を本格的に推進できれば、イーサリアムは再びWeb3の中心的プラットフォームとしての地位を強固なものにできると期待しています。