VanEckがアバランチ基盤のWeb3ファンドを6月に立ち上げへ

米資産運用大手VanEckは6月、アバランチ（Avalanche）ブロックチェーン上で構築されたWeb3プロジェクトに投資する非公開型ファンド「PurposeBuilt Fund」を開始することを発表した。本ファンドは、認定投資家向けに提供され、ゲーム、金融サービス、決済、人工知能（AI）など、複数のWeb3分野にまたがるトークンおよびベンチャー支援プロジェクトへの投資を目指す。

VanEckによると、本ファンドの余剰資本（Idle Capital）はアバランチのリアルワールドアセット（RWA）系プロジェクト、特にトークン化されたマネーマーケットファンドなどへオンチェーンで配分される予定である。ファンドの運用は、すでに1億ドル以上の資産を管理する「Digital Assets Alpha Fund（DAAF）」の運用チームが担当する。

RWAと実用性に焦点を当てる投資戦略

DAAFのポートフォリオマネージャーであるプラナブ・カネード氏は、「次なる暗号資産の価値の波は、インフラ構築ではなく“実業”から生まれる」と述べ、投機的トークンから実用性のある事業へと資本が移動している現状を強調した。こうした動きは、アバランチが提供する「サブネット」機能を活用した、機関投資家向けスマートコントラクト環境の広がりとも一致する。

VanEckはここ数ヶ月、デジタル経済に特化したETFのローンチを相次いで発表しており、今回のPurposeBuilt Fundもその一環である。5月にはデジタルエコノミー関連企業へのアクティブETFを開始し、4月には暗号資産関連企業の指数に連動するパッシブETFも発表している。

アバランチはRWAのハブへと進化中

アバランチは現在、約15億ドルのTVL（Total Value Locked）を有し、RWAや機関投資家向けプロジェクトのハブとして急速に存在感を高めている。5月16日には、Solv Protocolがアバランチ上で利回り付きビットコイントークンを発行し、機関投資家を対象に展開を開始した。

Ava Labsの最高業務責任者ジョン・ナハス氏は、「市場は投機的な誇大広告から、実用性と持続可能なトークン経済へとシフトしている」とコメントしており、アバランチの技術的強みと制度的対応力が評価されている。

VanEckをはじめとする資産運用会社は、現在70本以上の暗号資産ETFの上場申請を米SECに対して提出しており、トランプ政権による規制緩和方針のもとで、暗号資産関連投資の本格化が加速している。今回のPurposeBuilt Fundも、そうした流れの中で注目すべき戦略的な一手といえるだろう。

RWAとは、不動産、国債、マネーマーケットファンドなど、従来の金融商品をブロックチェーン上でトークン化する取り組みを指します。今回のファンドがそうした領域へオンチェーンで資本を投下するという点は、投資家の信頼を高めるだけでなく、伝統金融（TradFi）と分散型金融（DeFi）の“橋渡し”になるものです。

アバランチがこの分野のプラットフォームとして選ばれていることも非常に注目すべきです。同チェーンが持つ「サブネット」機能は、カスタマイズ可能な規制環境や取引速度、コストの観点から、機関投資家にとって理想的なインフラといえます。実際にSolv ProtocolなどのRWA系プロジェクトもアバランチ上で活動を活発化させており、この流れは今後さらに加速するでしょう。

また、VanEckがすでに複数のデジタル資産ETFをローンチしており、今後も数十本のETFをSECに申請中であるという事実は、機関投資家による暗号資産投資が明確に「構造化された金融商品」として捉えられ始めていることを物語っています。これは業界にとってポジティブな資本流入と信用向上をもたらす重要な動きです。

総じて、VanEckのアバランチ・エコシステムファンドの立ち上げは、今後の暗号資産投資が「投機から制度化、そして実体経済との融合」へと本格的に向かう第一歩として非常に意義深いと考えています。これは長期投資家や開発者、そして政策立案者にとっても、方向性を示す力強いメッセージとなるでしょう。