ビットコインが「金の台頭」から恩恵？米国の決済資産シフトでBTC需要が高まる可能性　

マクロ経済の専門家であるルーク・グローメン氏が、新たな世界的金融構造の中でビットコイン（BTC）が金とともに恩恵を受ける可能性があると指摘している。米国が製造業回帰を目指す中、米財務省証券（米国債）に代わって「金」が国際的な決済資産の地位を得る可能性があり、それがBTCの需要増加につながるという。

米国の製造業回帰にはドル輸出の縮小が不可欠、鍵は「決済資産の見直し」

グローメン氏によれば、バイデン政権やトランプ氏が掲げる米国内製造業の回帰政策を本当に実現するのであれば、ドルや米国債の輸出依存体制を見直す必要があるという。現在の米国の経済構造は、「モノを作る」代わりに「ドルと財務資産を世界に輸出する」ことで成り立っており、これは1971年以降のドル基軸体制の根幹である。

この問題を乗り越えるための鍵は、「決済資産」を米国債から金（ゴールド）へとシフトさせることだとグローメン氏は主張する。すでにその動きは始まっており、特筆すべき点としてトランプ政権が金に関税をかけなかったことを挙げている。

「金には関税をかけなかった。それは“資本を金に向かわせたい”というメッセージだ」と同氏は語っており、これはトリフィンのジレンマへの対処として、金の役割を強化する動きとも解釈できるとした。

金が中立的な決済資産となれば、ビットコインにも波及効果が？

トリフィンのジレンマとは、米ドルが世界の基軸通貨であるため、米国は貿易赤字を拡大せざるを得ず、これが長期的な通貨価値の不安定化やインフレを引き起こすという矛盾を指す。グローメン氏は、このジレンマを「ドルの弱体化」と「金の強化」を組み合わせることで緩和できるとし、その延長線上にビットコインの潜在的な役割があると述べている。

「金が新たな中立的決済資産としての役割を得れば、いずれ投資家はビットコインもその代替手段として評価するようになるだろう」と同氏は指摘する。

特に、金が再び国際金融の中心資産となった場合、ビットコインの「デジタルゴールド」としてのポジションが再評価され、中央銀行や大口投資家による採用が進む可能性もある。これにより、長期的にはBTC価格の上昇やボラティリティの低下といった効果も期待される。

金の復権はビットコインの地位向上にも直結するか

今回のグローメン氏の見解は、短期的な価格変動を超えたマクロ経済の構造変化がビットコイン市場にどのような影響を及ぼすかを考察する上で非常に重要である。金が国際決済資産として復権することになれば、その延長線上で非国家的かつ分散型の価値保存手段であるBTCも、次なる“準基軸資産”として注目される可能性は高い。

今後の政策動向、特に米中関係や金の国際的な流通ルールに関する動きが、ビットコイン市場にも間接的な影響を及ぼすことになるだろう。ビットコインが真にグローバルなマクロ資産としての地位を築くかどうか、その分水嶺が近づいている。

まず、金が米国債に代わる「中立的な決済資産」として再評価されるという動きは、現在の米ドル基軸体制が転換点を迎えていることを意味します。グローメン氏が述べたように、もし米国が製造業の国内回帰を本気で目指すのであれば、“ドルと米国債を世界にばらまく”というこれまでの経済モデルは維持できなくなるのは必然です。

その代替となるのが、価値保存性があり、政治的中立性を持つ金であり、それは中央銀行にとっても過去の経験から受け入れやすい資産です。そしてこの文脈の中で、ビットコインが「デジタルゴールド」として再評価されるというのは極めて論理的な展開です。

特に、金が再びグローバルな決済や清算の主軸となるのであれば、個人や非国家プレイヤーがアクセスしやすく、検閲耐性のあるビットコインは“金に代わる補完資産”として需要が拡大する可能性があります。これは、国家レベルの金融再構築の中で、ビットコインが「中立的な資産」として選ばれる土台になるでしょう。

また、グローメン氏が触れた「トリフィンのジレンマ」は、ビットコインにとって非常に追い風となる構造的要因です。ドルの供給過剰による信用低下に直面している現在、ビットコインの発行上限と供給透明性は“新しい信頼モデル”として魅力的に映ることになります。

結論として、グローメン氏の主張は、現在の地政学的・経済的変化を踏まえると極めて現実的な視点であり、金とビットコインが連動して金融秩序の再編に寄与する可能性は十分にあると見ています。短期的な価格変動よりも、こうしたマクロ的な視野からBTCの立ち位置を捉えることが、今後ますます重要になってくるでしょう。