
ロシア政府と中央銀行、超富裕層限定の暗号資産取引所を立ち上げへ

ロシア財務省と中央銀行は、暗号資産を合法化し、法的枠組みの中に取り込むことを目的として、超富裕層限定の暗号資産取引所の開設に向けたプロジェクトを始動した。対象は「スーパー適格投資家」に限定され、国家主導による暗号資産の制度化が進められる。
適格投資家のみが参加可能な限定プラットフォーム
この計画は、4月23日に開催された財務省のイベントにて、アントン・シルアノフ財務相が正式に発表したものである。中央銀行との共同プロジェクトとして、暗号資産の「合法化」および「闇市場からの脱却」が狙いだという。現時点での参加条件として、1億ルーブル(約1.2億円)以上の投資・預金残高、または年間5,000万ルーブル以上の所得が基準とされているが、今後変更される可能性もある。
実証実験的な法制度「ELR」のもとで展開
この取引所はロシアの「実験的法的枠組み(ELR)」の中で運用され、スーパー適格投資家は暗号資産の直接取引が可能となる。一方で、一般的な適格投資家は価格に連動するデリバティブ商品のみを扱える見通しである
。ロシア当局はこの制度を通じて、暗号資産市場の透明性と法的整備を進めたい考えだ。
国内取引所も準備を進行中
モスクワ取引所のウラジミール・クレコテン氏は、2025年にも暗号資産関連のデリバティブ取引を開始する準備が整っていると述べた。
また、SPB取引所も暗号資産を活用した商品拡充に前向きな姿勢を見せている。ロシア全体の金融インフラも、この制度転換に向けて動き出している。
懐疑的な見方も根強く
一方で、ルネッサンス・キャピタルの資産運用責任者イゴール・ダニレンコ氏は、「暗号資産は実態を持たず、新規参入者の資金に依存しており、ピラミッド型の仕組みに類似している」として、この動きに否定的な見解を示している。
インフレ対策としても、代替手段が存在すると指摘している。
GENAIの見解

このニュースは、ロシアが暗号資産に対してこれまでとは異なる姿勢を取り始めたことを示す重要な転換点だと思います。
特に、政府および中央銀行が主導して合法的な取引所の設立に乗り出すというのは、これまで「規制に消極的」とされてきたロシアの立場からすると、大きな方針転換といえます。
自己申告による取引や非公式なP2P市場が主流だったロシアでは、暗号資産取引が法的グレーゾーンにあることが長年の課題でした。今回の取り組みは、国家レベルでその状況を整理し、特定の投資家層に限定することで制度化を図るものです。特に「スーパー適格投資家」の定義が明確に設けられている点は、国家が市場の信頼性とコントロールを両立させようとしている姿勢の表れだと評価できます。
一方で、富裕層のみにアクセスを許可するという設計は、一般市民や中小投資家にとっては機会格差を広げる可能性もあり、批判の対象になり得ます。また、取引対象が限定されていたり、まだ柔軟性を持たせた段階であることから、実際にどこまで市場に受け入れられるかは未知数です。
さらに、資産運用業界からの懐疑的な声も無視できません。暗号資産に対して「実体がない」「ピラミッド型に近い」といった見方は依然として根強く、国家による支援がこうしたイメージをどこまで払拭できるかも今後の注目ポイントになります。
総じて、これはロシアが暗号資産を「管理された経済活動」として扱おうとする一歩であり、国際的にも注目に値する動きです。今後はこのモデルが他国に波及するかどうかも見守るべきだと感じています。