2035年までに4兆ドル規模の不動産トークン化市場が誕生か、デロイトが予測

デロイトが発表した最新レポートによれば、ブロックチェーン技術の普及に伴い、2035年までに4兆ドル相当の不動産がトークン化される可能性があるという。不動産投資のあり方に大きな変革をもたらす兆しが見え始めている。

トークン化不動産市場が年平均27％成長へ

デロイト金融サービスセンターの予測によれば、トークン化された不動産市場は2024年時点の3000億ドル未満から、2035年には4兆ドル超へと成長する見込みである。レポートでは、年平均成長率（CAGR）が27％を超えると試算されている。

不動産市場の構造変化とブロックチェーンの融合

プルーム・ネットワーク共同創設者のクリス・イン氏は、「パンデミック後のリモートワーク、気候リスク、デジタル化が不動産市場を大きく変革している」と指摘している。オフィスビルがAIデータセンターや物流拠点、省エネ型住宅に再利用される動きが進んでおり、投資家はこうした新たな資産クラスへのアクセスを求めている。トークン化は、こうした進化した資産への柔軟でプログラム可能な投資機会を提供する手段になるという。

貿易摩擦リスクでトークン化需要が加速

米国のトランプ大統領による関税政策への懸念も、リアルワールドアセット（RWA）トークン化市場への関心を高める一因となっている。安全資産としてステーブルコインやRWAに資金が流入しており、4月10日にはトークン化されたゴールドの取引量が10億ドルを超え、2023年3月の米銀危機以来最高水準を記録した。

規制と普及の関係に期待高まる

クリス・イン氏は、「規制は普及に追随する」と述べ、トークン化市場の成長が各国の規制環境を前向きに変える可能性を指摘している。

ただ一方で、SecuritizeのCOOマイケル・ソネンシャイン氏は、「不動産市場への過度な期待は慎重に見るべきだ」と警告し、現時点ではより流動性の高い資産のオンチェーン化を優先すべきとの見方も示している。

物理的な不動産を小口化し、トークンとして自由に取引できる仕組みは、これまで高額でアクセスできなかった資産をより多くの個人投資家に開放する可能性を秘めています。この観点から見ても、年平均成長率27％という予測は十分に現実的であり、資本市場の構造そのものを変革する可能性があると考えます。

また、リモートワークやAIデータセンター需要といった社会構造の変化が、不動産の利用価値そのものを変えていることも注目すべきポイントです。従来型オフィスビルの需要が減少する一方で、新しいタイプの不動産ニーズが生まれており、これをトークン化して柔軟に投資対象とする動きは、非常に理にかなっています。

一方で、規制の問題は依然として大きな課題です。不動産トークンが証券と見なされるケースも多く、各国の規制に適合しながらスケールするには相当の法整備と透明性が求められます。しかし、クリス・イン氏が指摘するように、需要が拡大すれば規制も追いつくという歴史的な流れを考えれば、今後数年で状況が大きく改善する可能性は十分にあると見ています。

総じて、不動産トークン化は今後のブロックチェーン応用領域の中でも最も現実的かつ影響力の大きい分野の一つになると確信しています。市場と規制の両輪がうまく噛み合えば、非常に大きな成長が期待できると考えています。