テザー、年内にも米国内向けステーブルコインを投入へ|規制の進展次第で前倒しも

ステーブルコイン発行企業テザー(Tether)は、米国内市場向けの新たなステーブルコインを2024年末にもリリースする計画を明らかにした。CEOのパオロ・アルドイノ氏が4月30日、CNBCのインタビューで語った。

テザーは現在、USDTを通じて米ドルの最大「輸出者」となっており、CoinGeckoのデータによれば時価総額は1,500億ドルに近づいている。

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米国市場参入の鍵は規制整備

アルドイノ氏は、米国市場参入の時期は「最速で今年末、遅くとも来年前半」とし、そのタイミングは米議会によるステーブルコイン規制法案の進捗に大きく依存すると述べた。

また、米国当局に対しては積極的に協力姿勢を示しており、「米ドルこそが米国が生み出した最高のプロダクトであり、我々はその輸出を担っている」と強調した。

USDTは海外需要が中心、米国内はUSDCが優勢

2024年4月25日時点で、USDTはステーブルコイン市場の約66%のシェアを占めており、最も収益性の高い発行体でもある。テザーは、USDT発行時に受け取るドルを米国債などの流動性資産で運用することで、2024年には140億ドル近い純利益を上げている。

しかし、USDTの需要は主に米国外に集中しており、米国内ではCircle社のUSDCが優勢である。特に、アフリカやトルコなど、既存金融インフラが不十分な地域でUSDTは高い人気を誇る。アルドイノ氏は、「USDTは小さな村の人々や、イスタンブールの小売店主のために設計された」と述べ、米国内向けには「異なる製品」を提供する予定であることも示唆した。

トランプ政権の影響でUSDC採用も加速

Web3分析企業Nansenの報告によると、2024年11月のトランプ大統領再選以降、米国ではUSDCの採用が加速している。CoinGeckoによれば、USDCの時価総額は600億ドルを超えている。

それでも市場全体では、USDTが今後も優位性を保つ可能性が高いとNansenは分析しており、「ステーブルコイン市場は最終的に“勝者総取り型”の構造に落ち着く可能性が高い」と指摘している。

GENAIの見解


GENAI

これまでUSDTは新興国や金融インフラが未発達な地域を中心に流通しており、「グローバル向けステーブルコイン」としての立場を築いてきましたが、ついに本丸である米国市場に進出する意向を示したことで、市場全体の競争構図に大きな影響を与えることになるでしょう。

現状、米国ではUSDCが信頼性や規制対応の面で優位に立っており、金融機関や大手企業との連携も進んでいます。そうした中で、USDTがどのように差別化された「米国向けの新製品」を設計してくるのかが注目されます。テザー社の発言からは、既存のUSDTとは異なる仕様やコンプライアンス体制を整えた新しいステーブルコインを出す可能性も読み取れます。

また、テザーが法執行機関と協調姿勢を示している点も戦略的に非常に重要です。従来、USDTは透明性や規制対応において批判を受けることも多かったため、米市場参入に際して信頼回復を狙う動きは妥当だと思います。

今後の焦点は、米国におけるステーブルコイン規制法案の動向です。この法整備が遅れれば、テザーの参入も先送りされる可能性がありますが、仮に法的枠組みが整備されれば、USDTがUSDCと真っ向から競合する新たなフェーズに突入することになります。

総じて、今回の発表はテザー社にとっては“第二の創業”とも言える動きであり、ステーブルコイン市場全体の流動性と競争力を押し上げる好材料であると見ています。ステーブルコインが今後のデジタルドルの基盤として定着する中で、USDTとUSDCの競争がどのような形で展開するかを引き続き注視する必要があります。

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