
「USDT」のテザーがAI分野に本格参入、オープンソース型プラットフォームでビットコイン決済対応も視野

ステーブルコインUSDTの発行元であるテザー(Tether)が、新たにAI(人工知能)分野への本格参入を発表した。新プロジェクト「Tether AI」は、分散型かつオープンソースのAIプラットフォームとして2025年後半にローンチ予定で、ビットコイン(BTC)やUSDTによる支払い機能を統合する構想が明かされた。
分散型AIエージェントで「自己主権」の実現を目指す
テザーCEOのパオロ・アルドイノ氏は、SNS「X」でTether AIについて言及。「Tether AIは“個人の無限知性”であり、あらゆるデバイス上で動作し、中央集権的な管理を必要としないAIランタイムだ」と説明した。
このAIエージェントを活用することで、ユーザーはウォレット操作やアドレス管理といった複雑な作業をAIに任せることが可能になり、ブロックチェーン技術の利用ハードルを大幅に下げることが期待されている。
さらに、AIエージェント間のピア・ツー・ピア通信を活用することで、中央サーバーを介さずに自律的に動作し、プライバシーを確保しながら仮想通貨による決済やサービス利用を完結させるという構想も示された。
APIキー不要のウォレット開発キット USDT・ビットコイン対応
Tether AIには、APIキーを必要としないウォレット開発キットが組み込まれる予定であり、USDTとビットコインでの決済処理が可能なモジュール構造が導入されるという。これにより、開発者はAIアプリケーション上で金融機能を容易に実装できるようになる。
このウォレット開発キットは、ユーザーの自己管理(セルフカストディ)を重視し、クラウドではなくローカル環境で処理が完結する仕組みとなる。
Tetherのビットコイン戦略と連動 マイニング分野にも進出
TetherはAI分野だけでなく、ビットコインの戦略的活用にも注力している。2024年4月には、7億3,500万ドル分のBTCを追加購入し、同時にビットコインマイニング企業Bitdeerへの出資比率を21%に拡大。また、USDTをビットコインおよびライトニングネットワークで利用可能にする取り組みも進行中である。
「アシモフの世界」を実現へ 哲学的なビジョンも掲げる
アルドイノ氏は、Tether AIについて「SF作家アイザック・アシモフが描いたAIの世界観を、現実の技術基盤として具現化することを目指している」とも述べており、テザーのAI構想には技術的・金融的枠を超えた壮大なビジョンが込められている。
Tether AIは、オープンソースのJavaScriptランタイム「Bare」をベースに構築され、さまざまなハードウェアに対応可能な設計となっている。デバイス内で動作するAI翻訳、AI音声アシスタント、AIビットコインウォレットなどのユースケースも公開されており、完全ローカル処理によるプライバシー重視型AIネットワークの構築が進められている。
GENAIの見解

このニュースは、テザーが単なるステーブルコイン発行企業から、次世代型の分散テクノロジープラットフォーム提供者へと進化しようとしていることを示す重要な転換点だと考えています。
特に注目すべきは、Tether AIがオープンソースかつローカル実行を前提としたAIインフラであることです。これにより、従来のクラウド依存型AIとは異なり、ユーザーのデータ主権とプライバシーを保ったまま、仮想通貨とAIの統合が実現可能になります。これは、中央集権的な大手テック企業のAI支配に対する明確なカウンターであり、Web3的価値観に基づいたアプローチだと言えます。
また、USDTやビットコインによる決済機能をAIアプリ内に組み込むという点も非常に先進的です。将来的には、AIエージェントが自動で暗号資産の送金やウォレット管理を行うことで、ユーザー体験が劇的にシンプルになると期待されます。これは、DeFiやNFTなどの利用ハードルを下げると同時に、新しいユーザー層の参入を後押しする要素になるでしょう。
さらに、Tetherがビットコインの保有やマイニング投資にも力を入れている点を見ると、同社は単なる決済インフラに留まらず、ビットコインを中核に据えた分散型経済圏の基盤を構築しようとしているように感じます。こうした包括的なビジョンは、仮想通貨業界全体の進化にも強い影響を与える可能性があります。
もちろん、構想の規模に対して現実の実装がどこまで追いつくかは未知数ですが、Tetherのこの挑戦は、AIと暗号資産の融合が今後のWeb3インフラの主戦場になることを象徴する動きだと見ています。引き続き、その開発動向には注目していきたいです。